2010年08月31日

一を聞いて十を知る

日本語には「一を聞いて十を知る」という諺がある。1つの言葉からいくつもの意味を察するという意味だが、これは例外なく囲碁にも当てはまるように思う。

囲碁には格言というものがある。格言とは囲碁における重要な考え方を一言で表現したものだが、よく考えられていると思う。

たとえば厚みに関する格言なら、「厚みは囲うな」「厚みは攻めに活かせ」「厚みに近づくな」と色々あるが、これは同じ事を複数の言葉で言い表したに過ぎない。すなわち、「厚みは囲うな」には、「厚みは攻めに活かせ」の意味も含んでるし、「厚みに近づくな」という意味も含んでいる。また、「相手に厚みを囲わせた方がよい=凝り形にさせる」なんて意味もある。これらの意味を「厚みは囲うな」という一言から察するのが冒頭の「一を聞いて十を知る」ということだ。

とはいっても、よほど頭がよくない限りこんなことは出来るわけではない。そこで上手(うわて)や本に頼ることになる。1冊の本に書いてある事を9割ほど習得できれば間違いなく力はつく。初心者のうちは序盤からヨセまで一局丸ごと解説した本が望ましい。1冊の本のみをトコトン勉強するのだ。

とは言ってもそれほどの根気がないなんて人は中にはいる。そこで上手に頼る事になるわけだが、上手はよく理解してるから一を教えれば十理解してくれるだろうと勝手に思ってしまう。そこに落とし穴があるわけである。

勉強に復習は欠かせない。人間は忘れる生き物である。1から10まで教われば1から10まで覚え切れるわけではない。なので復習は重要である。

同じように、教え手は教えられる側をうまくフィードバックしなければならない。たとえば10の事を教えたら、教えた10のことはちゃんとできてるか確認するのだ。できてなかったらまた教える。それを繰り返すうちに下手はどうにか10の事をこなすことができるようになる。とはいっても、10の事を同時に教えるのは骨が折れる。教わる方も大変だ。なのでいっぺんに教える内容は1〜3つ位がちょうどいいのではないか。

たとえば上手が1の事を教えたとする。1には10もの意味が含まれているから下手はそれらすべてをいきなり完璧にこなせるようになるわけではない。過ぎたるは及ばざるがごとしという。たとえば「弱い石から動け」と言われて、強い石からも動くようになることを指す。これは弱い石から動かなかったのと同じ事をしているのだとこの諺は伝えている。

なので教え手は、過ぎないように、足らないなんてならないように、うまい位置にいくように指導してやる必要がある。それをフィードバックと呼ぶ。

上手な教え手というのは、このフィードバックがしっかりしている。1を教えただけで10を理解させるなんて度台ムリな話だから、コツコツ1つ1つ教えていこうというのである。

教えるのも骨が折れる。そう簡単ではないのだ。
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2010年08月30日

大場より急場

格言の中でも重要な格言に「大場より急場」というものがある。大きな場所(大場)に打つより急を要する場所に打つ方が大きいという格言である。
所が初心者には急場とは何のことだかさっぱり分からない様子だ。急場とは、自分の弱い石の近くのことだ、と教えても今度は弱い石が分からない。挙句の果て、急場を意識するあまり、急場ではない場所(自分の強い石の近く)に打つようになる。
大場も急場も感覚的な事で、教えるのは難しい。

あと1つ、この格言は急場の次に重要な事を教えていない。それは急場が一段落したら大場に打つということだ。このことに気づくには意外にも時間がかかる。
それでは大場とは何処のことかというと、1辺や隅に近い所 2一番広い辺 3お互いの模様の境目 といったところか。1に空き隅、2にカカリシマリ、3にヒラキともいう。これは序盤の大きい手を示したものだが、初心者は3の「ヒラキ」を疎かにする傾向があるように思う。というのは、隅の小さい場所に拘って、後手を引いた上に大きな辺に先に回られてしまう事が多々あるからだ。
ここら辺の大場と急場の感覚が分かれば初心者卒業と言ってもいいだろう。
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2010年08月12日

東大教養囲碁講座



この本の特徴。

・全くの初心者を3ヶ月で10級に。
これは具体的な成果の部分。全13回の講義で学生を10級にまでしてしまうのはすごいと思った。

・囲碁のルールに慣れさせてから基本を徹底的に
ある程度強くなってからも囲碁を石取りゲームと勘違いしてる人がいる。度を超すとそれが囲碁でなく別ゲームになってしまう。たぶん最初が肝心で、最初に石取りゲームのイメージを持ってしまうとそのイメージを後々まで引きずることになるのだろう。
本書では石埋めゲームを使ってその点を解決している。ルールは囲碁とほとんど同じだが、勝敗の決め方が異なる。すなわち、盤面により多くの石を置いた方が勝ちとなる(囲碁の場合はより多くの地を囲った方が勝ち)。石をより多く置くためには、相手が打ってきても取れる場所(地)を大きくする必要がある。なので考え方としては囲碁と大きく変わる所はない。
これが囲碁のルールに慣れるために案外効果的なようだ。

・基本を徹底的に
基本を徹底的にといっても、定石や石の形など、その場その場においてほぼ絶対的なことは教えないのだそうだ。教えるのは、状況によって打ち方が変わるときにどういう風に考えたらいいか。それを言葉化して教えてる。(ここではその言葉を石倉式格言と呼ぶ。)
これは石倉九段が得意とする所で、石倉九段の他の著書との相違はほとんどない。でも本書はやや基礎的な事に重心を置いている印象を受けた。

・「決め打ち碁」を使って具体的に
決め打ち碁とは、2人が盤の前に向かい合って座り、大盤で先生が並べた通りに打っていく打ち方のことだ。1人が黒を持ち、もう1人が白を持つ。それを9路盤、19路盤とやっていく。
最初に石倉式格言が出てきて、そして石を並べながらその格言を確認していくという方針だ。言葉だけでは分かりずらい所も、並べることによって理解を早める狙いがある。

・問題がとにかく多い。
1章を除いて章の最後に基本的な問題がついてる。

・なんといっても親切設計
石倉式格言が、同じのが何度も出てくるから読者は自然と何回も読まされることになる。これが案外重要で、やはり一回読んだだけでは抜け落ちてしまうのだ。しかも!格言の部分は背景が灰色色の枠で囲ってあるから後で見直すときも、探しやすいようにできている。なので、最初に通読したあと、石倉式格言だけを復習するといった使い方もできる。ああ、なんて親切なんだ!

・読者層としては、
やはり、これから囲碁を始めようと思っている入門者に読んでもらいたい。次に、基礎的な事を確認したい初心者だ。囲碁を教える立場にある人も読んでいいかもしれない。などと思った。
posted by かげろう at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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